天然檜風呂。さんからお借りしているお題です,

1.欲しいって言ってみろ 2.すきだよ 3.心が痛いんだ 4.全てを貴方に捧げよう 5.僕ハ今、誰ニ愛サレテイルノ?
6.恋を終わらせるだけで 7.禁じられた恋など 8.私の咎はきっと 9.貴方だけが私の支え 10.私は何も知らなかった
11.気付けない、気付かない 12.すぐに逢えるよ 13.僕と君の生活 14.これからもずっと一緒に… 15.幸せだなぁ



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1.欲しいって言ってみろ
ただ座っているだけでも、ジットリと暑いある夏の日。
涼しさの味方はは小さな卓上扇風機だけ、開け放たれた窓からは、忌々しいほどにせみの声が聞こえてくる。

せみの声はなぜ、こうもいらだちを募らせるのだろう…
一人無意味に自問自答していると、より耳障りに聞こえてくる。
このいらだちの原因は、せみの声だけではない。
さっきから鳴るのを待っている、電話。
隣に配備しているのに、いっこうに鳴ろうという気配がない。
電池が切れているわけでもなければ、電波が悪いわけでもない。
ではなぜ、電話がかかってこないのだろう。

「いい加減、電話でもしてきてもいいのにね…」
電話に向かってつぶやいてみても、返事はなく。ただ悲しくなった。
フト、思いついた。自分から電話する、という思考は働かなかったのだ、思うが早いか電話の通話記録に目を留める。

呼び出し音…3回、4回、5回…
なかなか出ないのでちょっと期待はずれの思いを抱きかけたとき…
「もしもし?」
なんだかやる気のない声だった。

「ねぇ、今何してるの?」
何ともありきたりな台詞だった。
「別に…」
返事はそれに勝るありきたりな言葉。


「もしさ、暇だったら…」
ちょっと間を置く、何を言うか考えていたわけではなかったので、ためらったという方が正しい。
「暇だったら…っていうか、暇じゃなくても今から手みやげもって遊びに行ってもいい?」
私が行くのか、と自分でツッコミながら返事を待つ。

「別に…いいけど。手みやげ?」
困ったようにも聞こえたが、気にせず続けた。
「何がいい? 何が欲しいか、言ってみてよ」
相手の希望は多分、全て却下されて、アイスクリームになることは自分の中で決定していた。

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2.すきだよ
『どうすれば好きになるのか、考えてみた事ってある?…
自分が誰かを好きになることはあるけれど、誰かが私のことを好きになるってあり得ること?
私自身を好きってどういうこと?……
あなたのことが分からなくなるよ、だって好きだから』


恋愛小説の一つ一つの文章にゆっくりと思いを巡らす。
どうすれば好きになるとか、考えたことはないけれど、誰でも彼でも好きになるわけではないってことを考えると、やっぱり何かの鍵があるはず。
好きになるって、なんだろう?

自分が誰かを好きになることは、あるけど。
誰かが私のこと好きになってくれたかな?
多分、色んな人が好きになってくれたと思う。恋愛感情だけじゃなくて、家族もいるし、友達もいる。なにげない挨拶しか交わしたことのない人でも、笑顔で挨拶できたら好きになる。
だから、自分はたくさんの人に愛されてるけど、恋愛では…微妙かも。

そこまで考えると、眉間にしわが寄った。
いやいやと頭を振って、また思考の続きに戻る。
だから、考え方によってあり得るか、あり得ないかが決まるよね。

手帳に貼った、シールを思い出した。
「好きになってくれる人と、絶対会えるよ!」英語バージョンらしい。
友達がくれたけど、この言葉通りになるかは現在不明かな。


大きく深呼吸をしたくなった。


外に出てみよう、新鮮な空気を吸って頭をすっきりさせて。
そしてまず、自分にこう言おう。

「すきだよ」

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3.心が痛いんだ
君を思うと心が痛いよ、だって君の笑顔は可愛くて、胸をときめかせるから。
君の驚いた顔が可愛くて、またみたくなるからいじめてみる。

僕の幼稚な行動に気がついているのか、いないのか。


君はいつもすまし顔。
僕は知りたくて、知りたくて…心が痛いよ。
みんなに優しい君、みんなと仲のいい君。
僕が特別になれるかな、僕は君にふさわしいかな。


心が痛いよ、僕の愛しいあなた。



「はーい、オッケー」
演出家の声がする。
「でも、もうちょっと切ない感じで語れない? 一番メインなんだよね、ここが」
台本をメガホンのようにまいているために、ちょっとぼろぼろになっている。
そうですね、とつぶやいてから、改めて切ない感じねぇ、と考えた。
僕がやっている役の人は、この相手の事を思いながら、本当に切ない感情で想っただろうか?
いまいち感情移入できずにいる。

傍若無人で、おせっかい。可憐さのかけらも見あたらない恋愛相手。


やっぱり、どう考えてみても答えは、否。


恋は盲目、僕はうそつき。



あぁ、心が痛いよ。

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4.全てを貴方に捧げよう
通りなれた、道。
都会という言葉に共通する、とぎれることのない人ごみと、林立するビル。
なんのおもしろみも感じない景色たち。
通りなれた、この道も。

今日で最後と思っても、不思議と何の感慨も浮かんでこなかったし、嬉しくも悲しくもない無の状態。
私が、ここにいたことを誰かが覚えているわけでもなく、私が、またここを訪れた時には、きっと景色は変わっているだろう。
なんの変哲もない、居場所のない都会。


自分の田舎に帰ったわけではない、私の田舎はどこだったか…。
誰も知らない、何も知らない、人のあまりいない田舎に家を借りて住むことにしたのは、何のことは
ない、ただそういう気になったからだ。
ずっと働きづめで、家族とも縁遠くなっていたことに気がついたのはついこの間のことだ。
家族のために、と思っていたのは大きな間違いだったようだ。

もう一度やりなおすには、少し年を取りすぎているのかもしれないが、それでもやれるだけやってみようと思う。
自分の可能性…どこまで楽しめるか、やってみようじゃないか。

今まで見たことの無かった、明るい月を見上げてそう私は決意した。


狭い新しいすみかは、今までになく私を元気づけてくれたようだ。

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5.僕ハ今、誰ニ愛サレテイルノ?
悲痛な面持ちで、“ボク”は言ったのだ。

「死にたい」

どうしてそんなことをいうのか、感情のこもっていない目を見つめながら尋ねた。

「ボク、いらない子なんだって」

お母さんが言うの

涙も出ないのか、枯れてしまった花のように下を向いた。



突然の出会いだった、このボクとは。
もう夜になるというのに、公園でぼんやりと座っていたから声をかけたのがきっかけだったのだけど。私には理解できない哀しみを抱えているこの子を放っておくことが出来なくなったのだ。

「お家には帰れる?」
このまま、という訳にもいかなかったので尋ねてみたが、予想通り帰れない、という返答だった。
いつもどうしてるんだろう、いつまでここにいるつもりなんだろう?

「電話が鳴るんだ、3回。3回鳴ったら帰ってきていいよ、2回だったら今日は帰ってくるな」
ボクは、ゆっくり説明してくれた。
“お客さん”がいる間は家にいてはいけない、とのことらしい。




私がこの子ぐらいの時、何を考えていただろう?
平凡で、つまらないと思ったことはあったが、死にたいと思ったことはなかった。
楽しいと思える日々があった。なのに、この子にはそれがない。


「ねぇ、ボク…生きていててイイと思う?」

何度となく繰り返した言葉のように、私に問いかけた。
この子のために何が出来るのか、私には皆目検討がつかなかった。


「もちろん。今から私とお友達ね。だから、悲しくなったらいつでも私の所においで」


感情のこもっていない目に、ほんの少し光が差した気がする。
私の出来ること…なんだろう? この年端もいかない少年と友達になるという決定はこの子を少しでも救うことになるんだろうか…。
そんなことを考えていると、携帯のシンプルな音が3回鳴って切れた。
「帰らなきゃ、遅くなると怒られるから」
少し嬉しそうな表情を見せて、バイバイと手を振って走っていった。

途中、足を止めて振り返って言った。
「あ、そうだ。ホントに友達になってくれる? ボク、あんまり信じてないけど…」
でも…と続けた。
「もし、本当なら…ありがとう!」

そういって走り去っていった。
少しの間、私は呆然とその場を見つめていたが。くるりと回って帰り道に戻った。
あれは幻だったのか、なんだったのか…とにかく明日もここを通ってみよう。


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6.恋を終わらせるだけで
夏は暑いので、バテる。毎年変わらないこの行事。
食欲はなくなるのに、お腹がすく。でもやっぱり食べる気にならない。
眠たくなる、とにかく寝ていたい。寝ても寝てもしんどいので、疲れは回復しない。
肌がガサガサになってくる、栄養不足と疲労が蓄積するから。
こんな夏に、どうして恋をするんだろう?

あぁ、そうか。
だからこそ、恋をするんだな。
哲学的に逃避してみたけど、そこで行き詰まる。

しかしまぁ、恋愛しようと思う気にもならない。
そんな気持ちで恋愛しても絶対終わる恋でしょう。
また辛い気持ちを味わうぐらいなら、このまましばらく枯れたままでいようか。


今日も、一日外に出ないまま時間が過ぎていった。
そんな私は、ひきこもり…じゃなくて、六法全書がよく似合う。
司法試験勉強中の私には、恋愛なんて邪魔なだけ。

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7.禁じられた恋など
「愛してしまったものは仕方がないのよ! 相手に奥さんがいようと関係ないわ」
その声がテレビや小説の中の台詞であってくれたら、気楽だったのだが。
彼女の台詞に心からそう思った。

そして、瞬時に反論の声が頭の中で起こった。

『仕方ない? バカなこと言うんじゃないよ、仕方ないだけですまされたら相手の奥さんに失礼極まり無い上に、そんな身の上で恋する男もおかしいよ』

口には何も出さず、ただ黙っていた。
彼女はそれを、同意と見たのかなんなのか、延々くだを巻き続ける。
もう全て、聞き流すことにした。


そう、何よりも、もっと大事なことがあるから。

「今日は、僕がおごるよ。とにかく、ゆっくり家に帰って休んだら?」
彼女の酒量が少し多いことを見て取り、この場を切り上げるためにもそう切り出した。
少し不満げな顔をしたが、素直にいうことを聞いた。

「ねぇ、私何か間違ってるかな?」
帰りのタクシーの中、彼女はつぶやいた。
僕は、全てと思ったが、どうだろうねと言葉を濁すにとどめた。
ただ彼女は答えを待つことなくスヤスヤと寝息を立て始めたようだが。
彼女の家の前に到着した頃には、すっかり寝入ってしまって起きる様子もないので、彼女のカバンから携帯電話をとりだし、着信履歴のトップにいる電話番号にかけた。

「はーい、お母さん?」
出たのは、小学生ぐらいの女の子。
なんて言おうかと思ったが、ごく普通に。
「こんばんは、僕はお母さんの知り合いなんだけど、ちょっとお母さんを迎えに来てくれないかな?」
物騒な世の中信じてもらえないんじゃないかと思ったが、女の子はお父さんと行くと言って、電話を切った。


僕はその場からすぐに退散することにした。
ずっと待たせているタクシーに彼女を残し、タクシー代を払い、車を降りた。
外の風は、夜だというのに生ぬるい。

歩いて帰るには少し遠かった。
車の来た道を戻りながら、今日の出来事を頭で思い返し、まとめた。
しばらく歩いていると、後ろから声をかけられた。
「お客さん、さっきの人だよね? 乗って帰らない?」
タクシーの運転手は、そういって後ろの席を指さした。

「そうだね、じゃあお願いするよ」
そういって、僕は乗り込んで目的地を告げた。

「さっきの人、家族がちゃんと迎えに来た?」
僕はなんともなしに聞いてみた。
「ええ、男性と子どもと二人で降りてこられてましたよ。なかなか女性が起きないもんで、お客さんが払ってくれた料金以上に追加が言ってね。男性はかんかんでしたよ」
そりゃあ、そうだろう。知らない男から電話があった上に、妻が酔いつぶれてたとなると怒りたくもなる。

「まぁ、私には関係ないですけどね」
タクシーの運転手は軽く告げた。こういうことには慣れっこだと言わんばかりに。
「そうだね、僕も関係ないよ」
フッと笑いが漏れた。
そして、その先は沈黙が続いた。


真っ暗な住みかに着くと、色々しなくちゃ行けないことを考えつつ、ぼんやりしていた。
明日は…資料をまとめて、送って…。次は誰の調査だったか。
キレイだとは言えないソファの上で寝ころび、全て明日にしようと思考を放棄し眠りについた。



浮気調査、捜し物なんでもします
  −花風興信所


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8.私の咎はきっと
私を捨てないで、私を嫌いにならないでと言ったところで、重たいと思われるのがたいていオチで。
捨てられたくないと思っているのに、捨てられるのがいいところ。

だから、私は彼にそこまで要求しない。
私を捨てないで欲しいし、私のことを愛していて欲しいけれど、それを過度に要求すると嫌じゃないかと思うから。

「君に、僕は必要じゃないと思うんだ」
そうやって振られれば、仕方ないと諦める。
「そう、分かったわ。必要じゃないことはないけれど、あなたがそう思うなら仕方ないわね」
私の愛情が感じられないと、言われたことがある。
確かに、そうかもしれない。


私は、本気で傷つくのが怖くて、誰かを本気で愛することはない。
一方的に受ける愛は長続きしない、当たり前だけど。
何から逃げ、何を恐れ、何を考えているのか、それすら分からない。
だけど、心当たりがある。
昔、好きだった人を忘れられずにいる、ということを。
本気で好きになって、本気で愛した彼と別れたあと、もう二度と恋はしないと決めた。
誰かが好きになってくれて、その人のことを心から愛せるようになるまで、私はもう二度と自分から誰かを好きになることはないと、涙を流しながら誓ったことがあった。
もう、あれからずいぶん時間が経ったので、時効にしてもいいんじゃないかと思いながら、いつもどこかでその傷を大切においている自分がいる。
自己防衛が働きすぎて、悲劇のヒロインのようにずっと傷を引きずっている。



それにしても私が何も言わなくても、男の方が寄ってくる、なんていうのは面倒な事よね。
振った男のことを一秒たりとも思い出すこともなく、そんな物思いにふけっていた。

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9.貴方だけが私の支え
あなたと一緒にいられることがどれだけ幸せか、あなたの思っている以上に大切に感じている時間。
だから、貴重な時間を台無しにしたくない。


「君はさ、僕といて楽しいの?」
あなたはよく聞くけど、私は迷わずこう答える。
「もちろんよ」
どうして、何度も尋ねるのか私には分からない。私はこんなに楽しいのに。言葉でも伝えているのに、何が足らないんだろう?

「私、楽しそうじゃない?」
疑問をぶつける、どうしてか知りたいから。
「楽しそうじゃないってわけじゃないけど…」
うーんとうなってから続けた。
「表情が少ないんだよね、もっと顔に出してもらえるとわかりやすいんだけど」
私の表情が少ないことは百も承知なのに、どうしてそういうことを言うんだろう?

「君がもともとポーカーフェイスだってことは知ってるよ。ただね…」
ただ、もっと笑顔がみたいと思うんだ。って彼は言う。
笑顔…どうすればいいのか分からずに、答えに詰まったが、結論はこうだった。


「笑顔が出るように、努力するわ」
理屈ではなく、感情の問題は難しい。
感情がないとは言わない、無ければ恋もしない。幸せも感じない。
だけど、それを気がつかせてくれたのは、この人だから。

だからきっと、自然な笑顔も出るようになる。
この人と一緒なら…。

「うまく笑えなくても、これだけは信じて。私はあなたがとっても大切で、かけがえのない人だって言うことを」
顔の筋肉を精一杯動かして、口の端を伸ばしてみた。
引きつった笑顔は、彼に笑いをもたらしたらしい。


「ありがとう、僕もそうだよ。無理せずゆっくり一緒にがんばろ」
うん、とうなずくとさっきよりは自然に笑えていた。


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10.私は何も知らなかった
「さようなら」
書き置きだけ残して私の元を去った彼の行方は、さっぱり見当もつかず。
3年間一緒にいたのに、彼のことを何も知らないことに初めて気がついた。
上っ面の彼しか見ていなくて、分かった気でいただけだったと。

涙が止まらない日が何日か続いたが、何も知らない彼のことを今更知るすべもなく、探しようもなく、帰ってくる気配もないのであまり考えないことにした。

彼の名前すら思い出すことが少なくなったある日のこと、偶然彼の描いた絵を見つけた。偶然、とい
うより部屋の整理をしていて見つけたのだけど。
誕生日の時、彼が描いてくれたものだ。自転車に乗って、ずっと先の光に向かう抽象画。モチーフは
私たちだと言って、彼は笑っていた。
その時は、希望だと勝手に解釈したけど、もしかするとこの絵は別れだったのかもしれない。
彼は、その時から私と別れることを決めていたのかもしれない。ずっと先の、光に向かって行くために…。
ぼんやりと絵を眺めていたが、せっかくの思い出の品だし、さっきまで存在すら忘れていたとはいえ
、気に入っていた絵ではあったので部屋に飾ることにした。
額に入れようと、裏に返してみると以前は気がつかなかったメモが残されていた。

「君と出会えてよかった。ずっと一緒にいられたらよかったんだけど…」
と小さな文字で書かれていた、日付は彼がいなくなった書き置きの日と同じ。これを書いて、彼は出ていったんだ…。
どうして、一緒にいられなくなったんだろう? 彼は何を思い、何をするために消えてしまったんだろう?


本当に私は、何も知らなかったんだな…。

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11.気付けない、気付かない
「それでね、彼すっごい優しくてね…」
延々と聞かされているのは、友達の話。
嬉しそうに話しているのは、俺の友達。
彼女は、俺の友達が好きなのだが、それをたまたま知ってしまったことをきっかけに協力して、との要請で、いつもこういうノロケ話に付き合わされるハメになっている。
しかし、この子はのんきだよな。
自分の好きな男の話を、男友達が黙って聞いてるなんておかしいと思わないのかね?
心の中で嘆息するが、いつも黙って聞いている。
好きな男の話をしている女は、一番キレイだからな…。
惚れた弱みもあり、つっけんどんに出来ないのも理由の一つだ。

俺じゃなく、あいつをみてときめいたり、嬉しかったり、怒ったり、悲しくなったりするのを見て、正直おもしろくないけれど、だからといってどうする? 告白したところで、彼女の気持ちは分かっているんだし、変に気まずくなるよりは、このままって言う方が平和かもしれない。


「ねぇ、港くんは好きな人いないの?」
知らないから仕方ないのかもしれないが、無神経な質問だな。
「いるけどね」
目の前に、とは言えない。
誰? という好奇心の質問は聞き流し、秘密だよとだけ答えるにとどめる。
「そろそろ、彼に告白したいんだけど…」
急におとなしくなったと思ったら、この展開。
「あいつに? いいんじゃない、彼女は今いないはずだし」
動揺している心を必死で隠しながら答える、この芝居は何度やっても慣れないものだ。
「どうだろうね、告ってみて、成功するかな?」
それは、何とも言えないけれど…
「でも、確かめてみないと分からないじゃない。まぁ、気楽に自分の気持ち伝えてみたら?」
「それが出来たら苦労してないよ」
全く、その通りだと思った。俺もその一人じゃないか。

「…まぁ、告白するかしないかは君が決めることだし、向こうがどう答えるかも向こうの決めることだけどさ。万が一、もしもダメだったら…」
お人好しすぎるのかもしれない、と自分でちょっと情けなくなったが、
「ま、もしダメだったら、俺のとこに来なよ。泣きたかったら泣けばいいし、やけ食いしたかったら付き合うよ」
彼女の、笑顔とちょっと自信の回復した様子を見て、これでいいんじゃないかと、納得した。


失敗を望むわけじゃないけど、俺の所に来たらいいなーなんてね。
そう都合よくはいかないかな?

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12.すぐに逢えるよ
すぐに逢えると思っていたから、わがまま言わずにバイバイしたのに。
連絡するっていったから、待っていたのに。
あなたの言葉疑ったこと無かったのに。

ずっと待っていた、あなたからの初めての手紙。

【結婚します】のグリーティングカード

この文字を見た瞬間に、空気が凍った。
あなたのことを信じて待っていたのに、酷いんじゃない?
この仕打ち。

どうしてそれなら待って無くていいよって言ってくれなかったの?
怒りと哀しみと裏切りに心打たれていた。
カードを破り捨てようと思って、中身を見るとメッセージが小さい文字で書いてあるのが見えた。


『相手は、君だよ』

名前が記入されていた。それは私の名前だった…。
それから、『明日、帰ります』の文字。
明日? 明日っていつだろうとカレンダーを見る。
どういう明日なのか分からずに、消印を見たり、時計を見たり色々とした。

明日まで、彼を待ってみよう。
それで帰ってこなければ、もう彼のことは忘れよう。
そう思って早く寝ることにした。

ピンポーン ピンポーン

インターホンが何度も鳴る音で目が覚めた、時計を見たら…真夜中?
目が悪いので時間が分からないけど、

「どちら様ですか?」
無愛想にインターホンに出る。

「どちら様でしょうか?」
寝ぼけた頭で返事を考える。どちら様でしょうか? 何言ってるんだろう、この人。
ピンと来なくて、黙ったら相手から話しかけてきた。
「オートロックマンションに住んでたなんて知らなかったよ、早く開けてよ」
カメラに写る人も…目が悪くて見えない。

「誰ですか、本気で分からないんですけど?」
いい加減腹が立ってきて、無愛想にそう告げると
「あれ、忘れちゃったの、俺のこと?」
ちょっとあわてた様子で名前を告げる、嘘だと思ったけどちょっと待ってとメガネを取りに行く。

「うわ、ホントだ」
視界良好になってカメラを改めて見ると、ずいぶん様相は変わっていたけど、その人だった。
「ゴメン、すぐ開ける」
ドアを開けると、自動ドアから入ってくるのが見えた。


居ても立ってもいられずに、玄関の前で立っていたら、足音が聞こえてきた。
自分の部屋の前で止まるのを確認して、ドアを開ける。


「中に入れてくれないの?」
チェーンがかかったままだったことに気がついて、あわててはずした。

「久しぶり、元気だった?」
彼の笑顔は最後に見たときと変わっていなかった。ずいぶんひげ面になっていたけど。
「うん、元気だったよ。いつ、帰ってきたの?」
「さっき」
時差があることすっかり忘れててさと笑う。
現在時刻は午前1時を過ぎたところ。

「カードはいつ送ったの?」
思い出して尋ねる。
「あーあれ? ちゃんと届いたんだ。向こうで送ったよ」
そうなんだと納得しかけて気がついた。
「それじゃあ、ちゃんと手紙が着く日数も考えて送ったことでしょ?」
時差は忘れてなかったんじゃ…と言うよりも先に
「日数は考えてたけど、時間は考えてなかったんだよ。それに、ちゃんと“明日”だったでしょ?」
微妙に笑えないユーモアに、顔をしかめては見たけれど、それでも嬉しかった。

ずっと連絡をくれなかった理由も知りたいし、どこに行ってたのかも知りたいし、なんで行ってたのか、聞きたいことは山ほどあるけど、とにかく今は

「おかえり、無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」

嬉しい、その気持ちでいっぱいだった。
彼の笑顔を見られて、待っててよかったって思えたから。

「ただいま。待っててくれてありがとう」
夢じゃなければいいんだけど…といった覚えはおぼろげにはあるけどそれ以降の記憶は朝まで無い。
いつの間にか寝ていて、はっと目が覚めた。
隣にぐっすりと寝てたのが幻ではないことを確認して、ようやく現実味が出てきた。


「どこにも、もう行かないでよね」
寝顔に文句を言った。
またすぐに逢えるから、じゃなくてさ。これからは、そばに居させてよね。


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13.僕と君の生活
僕は一人暮らし

君は家族と住んでる。

僕も少し前まで家族と住んでた。

君は少し前まで一人で住んでた。

だから分かることあるよね

家族といたら、楽しいこともあるけど鬱陶しいときもある

一人で居たら、気楽なときもあるけど寂しいときもある。

僕と君の生活は全然違うようで似ていて

君と僕の経験は一緒になったときにきっと役立つ。


君は僕にこういったよね

「あなたの金銭感覚が私と合わないの」

だけど僕は一人で暮らしてから、金銭感覚が変わったよ。

君の節約ぶりにいらだったことがあったけど、今は違う

君が僕の先生だよ。

僕は君にこういったことがあったよね

「君は一人で生きていけるって肩を張りすぎだ」

君は家族とまた住むようになってから変わったよ。

僕は心配だったんだ、僕は必要じゃないんだろうかって悩んだんだけど、変わったね。

君は上手に人とつきあえるようになったし、人に頼ることや頼られることを学んだね。

家族とうまくつきあえるようになったのが何よりもの証拠。


僕と君の生活は、荒波ようなときもあれば凪のような時もあるかもしれない。

だけど、どんな波でも、君と一緒に乗り切って行けたらと思ってる。

だから

僕と一緒に暮らしませんか?

あなたを幸せにしたいと心から願っています。


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14.これからもずっと一緒に…
ずっと一緒にいられたらいいなって思うことある?
大切な友達と一緒にいられたらいいなって思うことはあったけど、異性に対して思ったことある?

…無い。


だから、分からない感覚。

恋愛相談を私にするなんて、多分あなたの目はとっても悪いと思うわ。
むしろどうしたら人を好きになれるのか聞きたいぐらい。
でも、話を聞くだけなら聞けるから話してみてよ。
あまり来たことのないようなカフェで、普通の女性らしい? 会話をしていた。

少し前に知り合った彼女は、私に恋愛相談を持ちかけてきた。
理由は、意中の相手と私が仲がいいから。
もしかして、宣戦布告だったのかしら? 私に取られないように予防策?
そうだったら取り越し苦労だけど、話を聞くぐらいならいいかと承諾した。

最初にこちらが提示した条件は『話は聞くけど、一切の協力はしない』ということだけ。

今まで、誰かが誰かのことを好きでという話を聞いたことがないから、返事に困る場面が多かったのだけど(相手のことをそういう風に見たこともなかったし)彼女は恥ずかしがりながらも、楽しそうだった。

一切の恋愛感情を持っていない私でさえ、アイツって結構いいヤツじゃないと思いかけるぐらいで。
ただ、この話をしてなにか有益なことがあるのだろうかと少し飽きてきた頃、携帯が鳴った。
ちょっとだけ、ゴメン。と断って誰かと確認したら、今噂のヤツだった。


「もしもし、何か用?」
特に忙しいという風でもなかったので、呼び出すことにした。
相手に会わせて話をするのが一番早いんじゃないかと思ったのだけど、協力はしないって言ったのは私だったかと電話を切ってから思った。



「ごめんね、話止めちゃって」
電話のことをどう説明しようかと考えていたが、小細工が出来ない質なのでストレートに伝えた。
彼女はなぜか困惑した様子だったが、原因はすぐに分かった。
「そういうのって、よくあるんですか?」
あぁ、と思って
「違う、よくあるとかじゃなくて…電話とかはまぁするけど。そうじゃなくて。んー説明が難しいんだけどね」
簡単に言うとねと言ってから、後を考えた。
「友達だよ…私にとっては兄妹みたいなもので。とにかく、心配しているような仲ではないし、私は彼のことを兄のようだと思っているけど、けして好きとかそういう感情はお互いに無いよ」
お互いに、を強調した。

「でも、お互いの気持ちを知ってるほど仲がいいって事ですよね?」
恋する人はみんなこんな感じなのだろうか…ちょっとため息をつきたくなった。
「友達ってさ、色々なこと知っててその人のことすごく好きじゃない。それでもって、その友達が幸せになってくれることを願ってるものじゃない? それと同じで。確かに性別は違うけど、そういうのは無関係で、相手の幸せを心から願ってるし、つながりは深く見えるかもしれないけど、心配しなくていいよ」
だから、あなたがあの人のこと好きなんだったら私は応援する、と言って席を立つことにした。

「そろそろ来ると思うよ、ヤツもきっとあなたのこと好きになるんじゃないかな」
私はそう思うよ、と言い残して帰ることにした。
本当は、前々から彼からも相談(普通の会話としてとらえていたが)を受けていた。
ただ協力はしない、自分でどうにかしろの一点張りで放っておいたのだが、行動を起こせずにいるヤツにちょっとじれったさを感じていた。

「私、仲人になっちゃったかも」
日曜日の街中は、いつもと違う種類の人が多い。
そんな人混みをかき分けながら、これからもずっと一緒にいてくれる人がいるっていうのはなかなかいいものだなぁとしみじみ思った。

「私には居ないけどね」
自嘲的な台詞をつぶやいてみたが、不思議と寂しさは感じなかった。
都会に珍しいさわやかな風が吹いた。

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15.幸せだなぁ
晴れた空、雨上がりのすっきりした空気をたくさん吸い込んだ。
「ようやく晴れたね」

「そうだねー」
気のない返事が返ってくる。

やれやれと思いながら、また外に目を向ける。
ずっと雨が降っていて、じめじめして気分が落ち込んでいたけど、ようやく晴れてくれたので、庭の土がぬれているのも気持ちよく感じる。

そんななにげない光景が、ずーっと続けばいいのにとしみじみと思った。

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